設立趣旨

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設立趣旨

持続可能な社会の構築に向け、日常生活や産業活動の基盤となるエネルギーの開発・利用・供給と環境保全の在り方について、総合的な観点から考え、 実践的な取り組みを着実に推進していくためには、国、地方自治体、産業界等がそれぞれの役割を果たすと共に、国民一人ひとりのエネルギー問題に対する関心 の喚起と理解の促進が不可欠である。特に、世代を超えた継続的な取り組みの重要性を考えた場合、次の時代を担う青少年層がエネルギー、環境に関する問題や 課題を自分自身の問題や課題として考え、将来において適切な意思決定と行動を行うための素地を養うと共に、そのような青少年を育成する教員の養成、さらに はエネルギーや環境に関する新たな技術開発を担うような次世代の教育も含めて、これらを目的としたエネルギー、環境に関する教育を、学校教育を中核としな がら生涯学習の中に位置づけ、社会全体として研究・実践・支援していくことの意義は極めて大きい。

折しも、我が国の学校教育の現状に対し、基礎学力、科学技術リテラシー、教員の指導力の向上、さらには科学技術創造立国に必要な人材の育成など、様々な 観点から改革の必要性が強く叫ばれている。そうした中で、科学的思考力、社会的思考力、日常生活の中での実践力、総合的な判断力に基づいた意思決定能力や 問題解決能力等の育成を目指すエネルギー、環境に関する教育を、今後どのように位置づけ実践していくかの視点が、これからの教育全体の在り方を考える上で も重要となってくる。

エネルギー、環境に関する教育をめぐる現状について見ると、近年の地球環境問題に対する危機意識の高まり、とりわけ地球温暖化防止に向けた京都議定書の 発効や発展途上国の急激なエネルギー需要増加に伴う国際石油需給の逼迫化等を背景に、エネルギー、環境に関する緒問題・緒課題への関心の高まりと連動しつ つ、エネルギー、環境に関する教育の重要性に対する認識も広まりつつある。2002年度(高等学校は2003年度)から全国の学校で実施されている現行学 習指導要領では、社会科や理科を中心に、エネルギー問題と地球環境問題を総合的な観点から取り扱う視点がより明確に示されたこと等もあり、学校や地域の特 色を生かした様々なエネルギー、環境に関する教育の実践も多く見られるようになった。加えて、国をはじめエネルギー産業やエネルギー関係機関、さらには大 学や研究機関等による、それぞれの特色やリソース(人材、情報、施設等)を活用した学校教育等への実践的な支援活動も活発化している。

しかし、現状においては、これらの実践や支援活動がそれぞれの学校や地域の中にとどまっており、組織的な広がりを持つには至っておらず、個々の実践や研 究の成果をエネルギー、環境に関する教育の基本理念や基本的な枠組みに基づく学習内容やカリキュラム作りにつなげようという共通理解も得られていない。加 えて、本来、エネルギー、環境に関する教育は、初等教育から高等教育、さらには生涯学習という継続性を持って行われるべき活動であり、かつ、教育学をはじ め技術学、工学、政治、経済、歴史、文化などの幅広い領域に関わるテーマであるが、現状では、限られた専門分野の研究者による教育、研究、実践にとどまる 傾向が強く、小学校・中学校・高等学校と大学・研究機関等との連携も十分とは言い難い。

こうした状況を踏まえ、エネルギー、環境に関する教育の今後の在り方を考えた場合、多様な実践や研究の蓄積を通じてエネルギー、環境に関する教育の量 的・質的両面からの発展拡充を図るとともに、エネルギー、環境に関する教育に対する社会全体の関心と認知度の向上を促すことが極めて重要である。

以上のような認識に立ち、エネルギー、環境に関する教育の理論的かつ実践的な研究の推進を通じて、国内外及び国際的な学会組織に向けてエネルギー、環境 に関する教育の情報を発信する組織として「日本エネルギー環境教育学会(仮称)」の創設を提唱する。本学会を通じた、小学校・中学校・高等学校の教員、エ ネルギー、環境に関する教育に関心のある大学・研究機関等の研究者、社会教育関係者、関連企業・諸団体、行政機関等の幅広い情報交換や交流が、学際的かつ 多面的・総合的な学問観の視点から、来るべき21世紀後半に向けて必須かつ不可欠であると考える。

学会の目指すもの

Big Umbrella

■日本エネルギー環境教育学会 Big Umbrella 概念図